膀胱・前立腺疾患
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前立腺肥大症とは?
前立腺は男性だけにある栗の実大の器官で、膀胱の下で尿道を取り囲むように存在します。精液の一部を作る働きをしています。40歳を過ぎる頃から前立腺組織が大きくなり、尿道を狭くして尿の出口を塞ぐようになってしまい、様々な排尿異常を起こすのが前立腺肥大症という病気です。重症になると尿閉といって膀胱に貯まった尿を自分の力で一滴も出せない状態になることもあります。尿閉時は導尿が必要ですが、尿閉を繰り返していると次第に腎臓の機能が悪くなってくることがあります。
また、実際の排尿状態を評価するために尿流測定といって尿が十分にたまった時点で専用の器械に向かって排尿をしてもらいます。
早期の発見が大切です
まず、排尿異常について何が一番困っている症状なのかをお聞きします。検査は、尿検査での炎症の有無、直腸診、超音波検査で大きさや形態を評価します。肥大症は癌とも発生年齢が同じであることから鑑別のために血液の検査でPSA(前立腺特異抗原)を測定します。また、実際の排尿状態を評価するために 尿流測定といって尿が十分にたまった時点で専用の器械に向かって排尿をしてもらいます。この検査は苦痛を伴うようなものではありません。さらに簡易超音波機器で残尿を測定します。これらを総合的に判断して重症度を判定し、治療の指標としています。
治療法は?
まず薬物療法を勧めることが多いです。困っている症状や重症度に応じて尿道を開く薬、前立腺を小さくする薬、血流を改善する薬、炎症を和らげる薬を単独あるいは併用で開始します。薬物療法で充分改善しない場合には、間欠的自己導尿や手術療法をご案内する場合もあります。
前立腺がんについて
国立がん研究センターによると、前立腺がんによる年間死亡数は2009年には10036人で、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんなどに次いで第9位でした。現在、増加傾向がもっとも強いがんで罹患数は2020年には肺がんに次いで2位となることが予測されており死亡者数も約21000人に増加すると推測されています。前立腺がんは初期には何ら症状がありません。前立腺肥大症のように排尿障害が出てきた時には既に転移などがある進行癌であることがほとんどです。そのためPSAという血液検査が開発される以前には発見された時点で既に骨やリンパ節に転移のあることが多く、治療が難しいがんでした。しかしPSAを測定することにより、非常に小さな癌の存在が判るようになった病気となりました。2016年の全国がんセンター協議会のデータでは転移のない前立腺がんの10年生存される方の割合は90%を超えていますが転移のあるがんでは40%以下でした。PSAが10ng/ml以上で転移の可能性が高くなりますのでPSA4-9ng/ml(グレイゾーンと呼ばれています)での前立腺生検(組織診断)をご案内することも多いです。
治療法について
前立腺がんの治療法は大きく分けて5つあります。
- 無治療経過観察
- 手術療法
- 放射線療法
- 内分泌(ホルモン)療法
- 化学療法
前立腺がん検診について
元々、前立腺がんは症状が出にくいため早期発見が困難でしたが、90年代以後はPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーの登場で非常に早期の癌までも発見できるようになり、治療成績が飛躍的に向上しました。血液検査でPSAを測定し、異常が見つかれば前立腺生検(組織検査)等の精密検査を行い癌かどうかを判定します。一方、PSAは鋭敏すぎて治療の必要がない小さな、おとなしい癌までも検出してしまうという問題点も指摘されています。欧米では30年以上前から前立腺がん検診がおこなわれており、欧州からの報告では前立腺がん検診によって地域における前立腺がんで亡くなられる方の割合を低下させるということがわかっています。一方、米国ではPSA検査が既に一般的な検査になっており、転移癌の割合が10%以下と少なくなり、前立腺がん検診の意義がうすれています。しかし、本邦ではまだまだPSA検診が普及していない地域も多く、発見される前立腺がんの10%~30%が転移癌ですので50歳以上の方には一度はPSA検査をご提案したいと思います。
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